今日は日曜日で、学校は休みだ。
それでも私は、朝からそわそわと立ったり座ったり、部屋のなかを歩き回ったりを繰り返していた。
昨日のアロマちゃんのことを考えても、犯人は大峠社長を殺しただけで、事件を終わりにするつもりはなさそうだ。
さとちゃんは無事だろうか。アロマちゃんは?
時計を見ると、まだ朝の八時だった。
それでも私はいても立ってもいられず、結局、身支度を済ませて出かけることにした。
家の敷地を出ようとしたところで、ふと、郵便受けのなかになにかが入っていることに気がついた。
「あれ? なんだろう……」
なかに入っていたのは、ノートの切れ端だった。
あわてて書きなぐったような文字で、読むのもやっとだった。
『心配をかけてごめん。
今日、影平さんとふたりでとなり町の“喫茶エトラ”に来てください。
それと、深神先生には知らせないで。彼は信用できない。 ——さとい』
「……さとちゃんからの手紙!?」
私は何度もその文面を読み直した。
「喫茶エトラ」はさとちゃんと何度か行ったことがあって、マスターとも顔なじみの喫茶店だ。
紙のうらには、影平さんの電話番号が走り書きしてあった。
「……でも、さとちゃんが深神先生のことを、どうして知っているんだろう。……それに、信用できない、なんて……」
昨日、深神先生には「信じてくれ」と言われたばかりだ。
そう考えると、深神先生はこういうことが起こるということも、予測していたような気もする。
私は空を仰(あお)いだ。
それから大きく息を吸って、紙に視線をもどした。
「私は、信じる。……深神先生を!」
私は念のため、辺りに人がいないか確認すると、深神先生に電話をかけた。
すぐに電話に出た深神先生に事情を説明すると、
『……なるほど。しかしそれは、十中八九、犯人の罠だろう』
深神先生は言った。
『書きなぐったような文字なのは、筆跡が本人のものではないということがばれないようにするためだ。昨日のアロマちゃんのこともある、この手紙どおりに動くことは、かなりの危険がともなうと思うが……』
「私、じっとしていたらへんになっちゃいそうなんです。きちんと注意しますから、行かせてください!」
私がそう言うと、深神先生が小さく笑った。
『……そう言うと思ったよ。たまちゃん、昨日も言ったが、私を信じてくれ。きみに危険が迫ったら、かならず助けに行くと約束しよう。すこしでも異変があったら、すぐにその携帯から連絡をするように』