影を追って(a)


もうすぐ正午になろうというころ、僕たちは学校を抜け出した。
学校内の食堂で作戦会議するというのもなにかと物騒だし、そとに出て食事をしよう、ということになったのだった。

僕たちが学校を出てしばらく歩いていると、私服すがたの日高さんとばったり会った。

「……あ、山吹くんに、ミカミくん」

日高さんは僕たちを見て、おどろいた。

「制服を着ているってことは、今日、学校に行ったんだ? ……もう授業は終わったの?」
「いや、エスケープしてきたんだ」

僕は答え、それから日高さんにたずねた。

「日高さんは、学校を休んだんだね。……どこかの帰り?」

すると日高さんは、困ったような顔をした。

「うん……、今朝、起きたときは、もう今日は動きたくないって思っていたんだけれど、 時間が経つにつれて、かなでちゃんとチャコのことが心配になっちゃって。 それで縫針先生のおうちに行ってみたんだけれど……」

日高さんは、うーん、とうなだれた。

「チャイムを鳴らしても、だれも出ないの。どこかに出かけちゃったのかな……」

一瞬、行方不明になった雀さんのことが、僕の頭をよぎった。

(まさか、雀さんがなにかをしたのか?)

しかし、すぐにその考えをふり払う。
僕が雀さんを信じないで、どうするんだ。

「縫針家に行くぞ」

ミカミが言った。

「犯人は賢明だ。いまならたぶん、まだ間に合う」
「ま、間に合うって、なにが?」

僕がたずねると、ミカミがふり返って言った。

「彩人の知人を、これ以上被害者にはできない」