発足(f)
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玲花はファイルから写真を四枚取り出すと、机の上に並べた。

一枚目は赤月桜子(あかつき さくらこ)。華やかな印象を与える美人だ。
まだ若いのに、赤月グループをまとめる代表である。

次の写真はすでに死亡している桜子の夫、赤月叶(かなう)。
桜子とは対照的で、おっとりとした出で立ち。
灰住(はいずみ)家の双子の弟で、病弱だったという話だ。

三枚目の写真は赤月舞(まい)。
赤月のふたりの子どものうちの妹のほう。
まだ小学生だが、母親の桜子とはよく似ていて、聡明そうな顔立ちをしている。

そして最後の一枚は彼女の兄、長男の赤月誠(まこと)。
現在、中学二年生である誠の髪は少しくせのあるねこっ毛で、年のわりにはどこか冷めた顔をしている。

そんな誠の写真を、玲花は桜子と叶の写真の間に置いてみた。
……どちらとも似ていない。

かつてのゴシップ誌によると、桜子は高校在学中に妊娠が発覚し、そのあと海外に渡って叶と結婚したらしい。
そして誠を出産したあとに、ふたたび日本へともどってきた。

玲花はメモに書いた文字をぐるぐるとペンで囲った。

……豪華客船事件の被害者の親族たちは、例外なく口を閉ざしてしまってなにも聞き出せなかったし、
そもそも死亡した人間のうちのふたり……黒野都子と高松海風に関しては、素性をたどることすらもできなかった。

赤月への取材はもちろん門前ばらいで、
とてもではないが玲花のような一市民の身分では、内部の人間とは接触できなかった。

しかし、赤月の子どもが通(かよ)っている学校なら、どうだろう。

さいわいなことに、赤月誠の通っている学校は、かつて桜子や叶が在学していた学校と同じだ。
玲花はメモをぴしっ、と叩いた。

取材の狙い目はこの学校、月見坂学園。



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