蒼太たちのやり取りを見ていた女子生徒のひとりが、お菓子をもぐもぐと口に入れながら言った。
「もひかひて、宮下先輩も同好会に入るの?」
女子生徒は毛束の多い髪を高い位置でふたつに結んでおり、校則違反のカラフルなリボンを飾っている。
目鼻立ちがはっきりしていて、すこし派手な印象だった。
「……詩良(しいら)、食べものを口に入れたまま、しゃべらないでよ」
そう詩良に声をかけたのは、詩良と向かい合って座っていた、もうひとりの女子生徒だった。
女子生徒は眉間にしわを寄せながら、詩良の胸もとを指でさした。
「お菓子が胸もとにこぼれているわ」
「いつものことだしいいじゃん、もこなも食べる?」
「いらないわよ」
詩良がお菓子の箱をさし出すと、「もこな」と呼ばれた女子生徒はふん、と顔を背けた。
それからもこなは緋色に向かって、あいさつをした。
「私は中等部二年の、鹿波(かなみ)もこなです。こっちのお菓子を食べている子は、同じ二年の下水流(しもつる)詩良」
もこなは長い髪に、派手な髪飾りを両サイドにふたつつけている。スカートの丈(たけ)も短かった。
「同好会のメンバーは、これで全員?」
緋色にたずねられ、蒼太はうなずいた。
「ほんとうはもうふたり、兄妹がいたんだけれど、先月、転校しちゃったんだ。
それでメンバーが僕と青空のふたりになってしまったところに、彼女たちが代わりに来てくれるようになって」
「……メンバーが足りずにミステリ同好会がなくなってしまうことは、どうしてもさけたかったので」
もこなが言った。
「でも、見てのとおり、ミステリに関係する活動はいっさいしていません。
ただ好きなことをしながら、なんとなく集まっているだけの同好会です」
「この同好会に入会するには、なにか条件はあるの?」
緋色がたずねたので、その場の全員が緋色に注目した。
「それって……」
「ぼくも入りたいな、この同好会に」
緋色はそう言って、にっこりと笑った。