蒼太たちは、階段のおどり場でようすをうかがっていた。
そして詩良がこちらにやってくると、もこながすぐに駆け寄った。
「詩良っ!!」
もこなは詩良の左足のけがを確認すると、口もとに手を当てた。
「ひどいけが……! ど、どうしよう……!」
「……俺、保健室から止血できそうなものを持ってくる!」
朔之介はそう言うと、階段を駆けおりていった。
その場でうずくまる詩良に緋色が近づいて、そっと声をかける。
「下水流さん、……亀ヶ淵君は?」
「……あたしと引き換えに、人質に」
「わかった。……下水流さん、よくがんばったね。お疲れさま」
そして緋色がどこかに行こうとするので、蒼太があわててたずねた。
「緋色、どこに行くつもりだ?」
「あおちゃんはここにいて。深神先生と合流したら、あとはよろしくね」
「ちょっと待っ……」
「……あなたたち、だいじょうぶ!?」
そのとき、聞き慣れない声がしたかと思うと、階下から見知らぬ女性が現れた。
「……あなた、だれです?」
おどろいた蒼太がたずねると、女性……玲花は、床にひざをついて詩良の傷の具合を見ながら、言った。
「私は六路木玲花、朔之介君と新弥君の知り合いです。たったいま、朔之介君と会って、すこし話を聞きました」
玲花はポケットからハンカチを出すと、詩良の太ももの傷口に押し当てた。
「あなた、この場所を強く圧迫して。あと、足のつけ根も押さえておいて」
呼ばれたもこなが、玲花に代わって詩良の傷口をおさえる。
玲花はそのようすを確認してから、立ち上がった。
「朔之介君がすぐに、清潔なガーゼと包帯を持ってきてくれるはずです。そうしたらガーゼの上から包帯を巻いてください」
「あ、ありがとうございます……」
蒼太が礼を言うと、玲花は顔をあげて、蒼太を見た。
「さっきここにいたもうひとりの男の子は、どこに?」
「え……?」
言われて気づく。
……緋色がいない。
はっとして鷲村たちのいる教室の方向へ顔を向けると、玲花が一歩、歩み出た。
「私は、彼のあとを追います」