郵便屋に連れられて歩くとを、街の住民たちはふしぎそうにながめた。
「郵便屋さん、その子らはだれだい?」
「このあたりでは見ない顔だなあ。旅人にしては、小ぎれいな格好をしているし……」
つぎつぎと声をかけてくる住民たちに対して、郵便屋は笑顔をくずさずに、
「僕の遠縁の親戚です」
とだけ答えた。
はそのようすを見ていて、なんだか申しわけない気持ちになってしまった。
「ごめんなさい。わたしたちのせいで、郵便屋さんに迷惑をかけちゃって……」
「いえ、こんなことは迷惑のうちに入らないですよ」
「でも、街の人たちがだれも、ぼくたちのことを知らないなんて」
は言った。
「ぼくたち、この街ではないところに住んでいた人間なのかな……」
「、答えを急ぐ必要はありません。……この街は、ゆっくりと時間が流れている街ですから」
郵便屋はそう言うと、街の中央広場の正面にある、古びた一軒の家のまえで立ち止まった。
赤い三角の屋根に、煙突がついている二階建ての家だ。
正面には木でできたとびらの入り口があって、家のとなりには馬車を停めるスペースと、蔵があった。
「ここが僕の家です。……あなたたちが記憶をとりもどすまで、ぜひ僕の家で暮らしてください」
さらりと言われて、とはびっくりして郵便屋を見た。
「えっ、ええ!?」
「そこまでお世話になるわけにはいきません!」
ぶんぶんと首を横にふるふたりにかまわず、郵便屋が家のとびらに手をかけたそのとき、
がつん。
大きく開いたとびらが、郵便屋のひたいに見事にヒットした。
同時に、栗色の髪の少年が家のなかから飛び出してきた。
「なんだ!? まさか、また泥棒がうちに……!? ……って、郵便屋か」
年齢は、よりも少し年下のように見える。
少年は、いまにもふらりとうしろに倒れそうになっていた郵便屋の胸ぐらをぱしっ、とつかむと、そのままぶんぶんと、郵便屋のからだを前後にゆらした。
「あっ、そんなことより、郵便屋! うちに泥棒が入ったんだよ!」
「え、ど、泥棒……ですか?」
目を回しながらも、郵便屋が言った。
「盗んで得をするようなものなんて、うちにはなにも置いていなかったと思いますけれど……、アルノ、いったいなにが盗まれたんですか?」
「それがなんと……!」
アルノと呼ばれた少年は動きをぴたり、と止めて言った。
「……なんと、なにも盗まれていないんだよ」
アルノの言葉に、郵便屋はさらに混乱したようだった。