ほん(d)
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部屋のなかをのぞきこんだは、はっと息をのんだ。
部屋のなかには木製のベッドが置かれていて、その上にはひとりの老女が、上体を起こして座っていた。

ろうそくの明かりに照らされて、きらきらと光る銀色の髪。
やさしげなほほえみは、まるで絵本のなかに出てくる妖精のようだ。

その老女の茶色い瞳の色に、は見覚えがあった。

「……あ、アルノくんの、おばあちゃん?」

郵便屋の家で出会ったあのアルノと、この老女はどこか似ているのだ。
のつぶやきに、郵便屋がうなずいた。

「ええ、そうです。……以前、アルノは彼女とふたりで暮らしていましたが、
いまは彼女のからだが少し弱っているので、ルイスが看病をしてくれているんです」

それから郵便屋は、老女に近づいて、そっと声をかけた。

「こんにちは、フィリーネさん。アルノから手紙をあずかってきました。
アルノはよく、僕の仕事を手伝ってくれているので、僕もとても助かっていますよ」

フィリーネさんは、にこにこと笑っていて、言葉を発さない。
でも、とてもうれしそうだ。

郵便屋は、フィリーネさんの顔に垂れていた髪を、さらりと横に流してやった。

「……また来ます。今度ここへ来るときは、アルノもいっしょです」

そう言って、フィリーネさんとほほえみ合う。
その光景を見ていて、はなんだかどきどきしてしまった。

なぜだろう。
郵便屋のいつもやさしげな瞳はそのままのはずなのに。

どこかかなしくて、胸がせつなくなるのは、なぜなんだろう。



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