「神さま……って、もしかして森の神さまのこと?」
「し、知ってるですか!?」
それから少女は、近くに置いてあった自分の荷物を、ごそごそとかき回した。
「あたし、『さゆ』が名前です。……これは、旅に出た父から届いた手紙です」
封筒から出てきたのは、折りたたまれた薄い紙だった。
そこには筆で、たて書きに文字が書かれていた。
「この紙……」
触ってみて、はっとする。
これは、植物から作られる『こうぞ紙』だ。ぼくはこの紙の手ざわりには覚えがある。
「父は行方不明で、手がかりはその手紙しかないです。その手紙には『神さま』について、書かれていました。この土地にはどんな願いも叶えてくれる神さまがいるようだ、……これで悲願が叶うかもしれぬ、と……、でもそれ以降、手紙は二度と届きませんでした」
それからサユは、封筒に押された印を指さした。
「送られたのは、この街からでまちがいないです。この印と同じ印章、この街の郵便局で見たですから」
「え……」
この街の郵便局というと、郵便屋の家のことだろう。
はおどろいて、サユを見た。
「じゃあ、きみが郵便屋さんの家を荒らした犯人だったのか!」
がそう言うと、少女はびく、と身をすくませた。
「……つかまえますか? あたし」