こたえ(d)


「……やっぱり、俺が見こんだだけはあったね」

神さまは笑うと、つかつか、とたちのほうへ近づいてきた。

「ゲームクリア、おめでとう。それじゃあ約束どおり、願いごとを叶えてあげるよ。なにがいい? 最初に言ったとおり、郵便屋たちを悪夢から覚まそうか? ……でも、郵便屋たちのために願いごとを使ってしまえば、キミたちはもう二度と、もとの世界に帰ることができなくなる」
「……待てっ!」

そのとき、たちの背後から、少女のするどい声がした。
ふり返るとそこには、サユがいた。

サユはたちと神さまのあいだに立つと、さけんだ。

「おまえが神さまか!? おまえが、あたしの父を殺したのか!!」

うしろから、たちを追ってきたらしい、郵便屋たちのすがたが見える。
は言った。

「……サユ、きみ、あの話を聞いていたのか」
「……聞いていた。あたしの父は死んだ。あたしの病は、治った。きっとこの街の神さまにお願いして、その引き換えに殺されたんだ!」

ようやく追いついた郵便屋が、神さまのすがたを見ておどろいた。

「……あなたは」
「いかにも、俺が神さまだ」

神さまは腕を組んで、不敵に笑った。

郵便屋といっしょにやってきたアルノとロミィは、そんな神さまに遠慮なく近づくと、服を引っ張ったり、足をつついたりしている。

「ちょっと、威厳がなくなるからそういうのやめてっ」

神さまはうっとうしそうにふたりを手ではらうと、ふたたびサユに向き直った。

「えー、ゴホン。……異国の娘。キミは、あの男の娘だったのか」
「……知っているのだな。やはりおまえが……!」

そしてサユが、きっ、と神さまをにらんだ。

「……ゆるさない!」
「待って!」

いまにも神さまに飛びかかっていきそうなサユのうでを、がつかんだ。

「神さまとの取り引きの代償は、『永遠』の悪夢なの! サユさんのお父さんが、その、亡くなったなら、それは神さまと取り引きしたんじゃなくて……!」

しかし、サユはの手を無理やりふりほどいた。
そしてすばやく腰のうしろに手を回すと、帯のなかからなにかをとり出して、右手に構えた。

それは、平らな鉄製の武器、クナイだった。

「さ、サユ……」
「父のカタキ!!」

サユは目にも止まらないようなはやさで、神さまに向かっていった。
そしてクナイを神さまのからだに突き立てようとして、

その瞬間、神さまのとなりにいたロミィが、神さまのまえへと飛び出した。