06:一人とひとり(d)
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都子はしばらくだまっていたが、やがて口を開いた。

「お見事でした。おっしゃるとおり、私が黒宮紅葉……、この事件の犯人です」
「都子……」

泣き出しそうな顔で都子を見る鈴音に、都子は苦笑しながら「ごめんね」と言った。

「数年前のあの火事で両親を失ってから、ずっとあの事件のことを調べていました。
そして村崎支配人、啓祐さん、塩原院長の三人が犯人だということをつき止めました。
彼らに復讐してやろうと心に誓ってからは、偽名を使って、村崎支配人のもとにもぐりこみました。
こつこつと働いて……、そしてようやく、この機がめぐってきたんです……」

そして、都子は塩原のことを、きっ、とにらんだ。
塩原はその威圧感に、びくりと肩をこわばらせる。

都子は低い声で、言った。

「……それなのに、あなたのことを殺し損ねるなんて……」

その時、

パァン、

と乾いた銃声がバーのなかに響き渡った。
おどろく深神たちの前で、塩原の胸もとがみるみる赤く染まっていった。

「かはっ……」

塩原は苦しげに胸をおさえると、そのままどさりと床の上に倒れた。
そして、まもなく動かなくなった。

深神たちがふり返ると、そこには拳銃を両手でかまえたままの、佐藤が立っていた。

佐藤は、憔悴(しょうすい)しきっている様子だった。
髪はぼさぼさで、目の下にはくまができている。

佐藤は言った。

「深神先生。村崎支配人と、高松さんを殺した犯人は、この僕です。
都子が復讐する気持ちを止められないなら、僕が代わりに決行しようと決めていたんだ」
「ちがうわ、私がやったのよ! 啓祐さん、私をかばおうとしないで……!」

佐藤は、いまにも泣き出しそうな都子に向かってほほえんだ。
それはとても、おだやかな笑みだった。

そして拳銃を片手に持ちかえると、その銃口を自分のこめかみに当てた。

「都子のことを、こころから愛していた。
七年前、おろかにも犯行に加担してしまったけれど……僕はずっと後悔していた。
都子は僕のことを許してくれると言ったね。でも……、僕だけが罪をつぐなわないわけにはいかないよ」
「佐藤さん、ばかなまねはよすんだ。おとなしく、その拳銃を渡してください」

深神がそう声をかけたが、佐藤はそれに応じる様子もない。
佐藤はひとつぶのなみだを流しながら、笑った。

「都子、愛しているよ」

そしてそのあとすぐに、短い銃声がバーのなかに響いた。



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