7月4日(金) 8時00分(f)
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深神さんは、僕にコーヒーをいれてくれた。

「西森少年は砂糖なしのミルク多め、だったかな」

そう言いながら僕の前に、コーヒーと小さなミルク入れを置いた。

「お気をつかわせてしまって、なんだかすみません」
「気にするな、私と西森少年の仲ではないか」

僕の対面に座った深神さんは、長い足を組んだあとに、自分もコーヒーに口をつけた。
彼とふたりきりになることなど今までになかったので、僕は少しだけ緊張した。

「それで、西森少年はなにかについて知りたくて、ここへ来たそうだな?」
「ええと……」

いきなり本題をふられて、僕は口ごもった。

正直、いまとなってはあの"七月七日"のリアリティは、完全になくなっていた。
もしかして僕は、ものすごく子どもっぽいことにむきになっているのではないか、と心配になってきてさえいた。

しかし、なにも聞かなければ、ここに来たことが無駄になってしまう。
僕は思いきって口を開いた。

「"村崎みずき"という女の子について、調べてほしいんです」
「村崎みずき、ね」

深神さんは胸元からメモ帳とペンを取り出すと、そこにさらさらと文字を書き留めていく。

「その人物について知っていることは?」
「もしも実在しているのなら、虹ノ端の……付属の高校に通っていると思います。学年は二年生」
「ふむ。……早速だが、少し調べてきてもよろしいかな?」
「は、はい! よろしくお願いします」

深神さんは、ふたたび自分の部屋へと入っていった。
そのうしろすがたを見送ってから、僕は息をついた。

この世界に、村崎みずきがいなければいい。
そうすれば、あの"七月七日"はより一層、現実から遠のいていく。

「どうかしている。……どう考えたって、あれは夢の世界じゃあないか」

頭をふった。しかし夢であることを望んでいる一方で、
こころの片すみでは、彼女とこの世界で会ってみたいと思う気持ちもたしかにあった。

だれもいない世界を共有した、たったひとりの僕の理解者。

僕にはなにを望むことが正しいことなのか、よくわからなかった。



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