ナツは、忘れないうちに「イクマさん」の電話番号をメモしながら、電話の男から聞いた内容をいたるに話した。
ひと通り話を聞いたいたるは、なにやら考えこんだ。
「ちがう番号から……ぼくにつながる?」
ナツはいたるの顔を横からのぞきこんだ。
「いたる? また難しいことを考えてる?」
「いや、そんなんじゃ……」
いたるは、困惑気味に顔をあげた。
「でも、もしかすると電話の転送サービスを使っているのかな、って思って。ぼくのお父さんが仕事で使ってるんだ」
「そうか!」
ナツが理解した、というように太ももを叩いた。
「イクマさんは取り立ての電話がたくさんくるのがイヤで、別の番号に電話が転送されるように設定したんだ!」
「それがいちばんありそうだよね。適当な番号を設定したら、たまたまぼくの番号だったのかも」
それを聞いて、ナツが人差し指を立てた。
「なあなあ、そういうのってさ、……携帯ショップでなんとかできないかな? これ以上イクマさんから電話が転送されてこないようにしてもらうんだ」
「……そっか。うん、たしかにできるかも。イクマさんの電話番号はナツくんのおかげでわかったわけだし」
先ほどナツがメモした紙を、いたるは掲げた。
「今日中にまちがい電話、止められるかな。ナツくん、付き合ってくれる?」
ナツは笑顔で頷いた。
「もちろん!」