7月7日(月) 6時58分(a)
----------

あくる日、七月七日はやってきた。
僕はこの日を、病院のベッドの上でむかえることとなった。

台車を引く音、看護婦さんの話し声。
僕はしばらくのあいだ、外部から聞こえてくる音に耳をかたむけた。

この世界にもどってきた、という表現は、正しくないように思う。
毎日とは、昨日の延長線上のはずだから。

ただ、こちらの世界で眠っても、もうあのおかしな池袋で目覚めることはなくなった。
たぶんこれから先も、二度とあの世界の地面を踏むことはないだろう。

なぜなら緋色が、"向こうの世界"の僕を殺してくれたから。

……緋色はまだ、あちらの世界にいるのだろうか。

外の風景が見たくなって、身体を起こして立ち上がった。
一応の点滴を受けている僕は、点滴セットを右手で押しながら、窓ぎわへと歩いた。

空は明るい。雲ひとつない晴天だった。
風を感じたかったが、さすがに勝手に窓を開けるわけにはいかない。

ここからは、眼下に駐車場が見える。
車も人も、動いている。

「あら? 西森さん、もう起きてらしたんですね」

いつの間にか病室に入ってきた女性の看護師さんにそう声をかけられ、僕はふり返った。

「八時には食事ですから、時間になったら食堂に来てください。場所はわかりますよね?」
「はい、だいじょうぶです。ありがとうございます」

看護師さんはにっこりと笑って病室を出て行く。
彼女を見送ったあと、僕はふたたび、窓の外へと視線をもどした。
そうして朝食の時間までずっと、僕は動く世界を、ただただぼんやりとながめ続けた。



<<前のページ  【きみひとり】にもどる  次のページ>>