ポートレート(d)
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二限目の授業が終わった後、僕は穂坂さんに言われたとおり、下駄箱の前へ行った。
僕のクラスよりも穂坂さんのクラスのほうが終わるのが早かったのか、そこにはすでに穂坂さんの姿があった。

「ごめんね、急に呼び出しちゃって」
「ううん、休み時間なんて、特にすることもないし」

そんな社交辞令のようなやりとりの後、穂坂さんはうつむき加減で言った。

「……私だって、知っているんでしょう?」

穂坂さんの質問には主語がなかったけれど、それでもなにを問われたかはわかる。
穂坂さんが言っているのはもちろん、あのお化け騒動の犯人のことだ。

当の本人に対してしらばっくれる必要もないと思ったので、僕は素直にうなずいた。

「……うん。ごめんね、お化けのせいなんかにして」

僕がそう言うと、穂坂さんはふるふると首を振った。

「まさかこんな大騒ぎになるとは思っていなかったから、なんだかこわかったの。
でも、事情を知ってくれる人がいて、……それが葵君で、よかった」

もしかすると、お化けのせいにすること自体も、穂坂さんを苦しめることになるかもしれない、
と思っていた僕は、その言葉にひとまず安心した。

僕は頭をかきながら、言った。

「でも、実はあの写真、僕が作ったんじゃないんだ。穂坂さんのクラスのオワル……、十了(つなしおわる)と双子の兄弟のハジメって、わかるかな?」
「あ、うん。いつもマスクをしている……」
「そう、そいつ。そのハジメがカメラにすごく詳しいやつで、今回の心霊写真を作ってくれたのも、彼なんだ。
僕だけ感謝されるのはフェアじゃないから言ってしまったけれど、ここだけの話にしておいてね」

僕がそう言うと、穂坂さんはこくん、とうなずいた。

「……葵君、ともだち思いで、やさしいんだね」
「いや、どちらかというと、ハジメがそうなんだと思う」
「……うん、決めた。あの、これもなにかの縁だと思うから、思い切って言っちゃうね」
「うん」
「私、前から葵君のことが、気になっていたの」
「………うん?」

気になっていたって、なにがだ?
僕の頭がなにかを思考する前に、彼女は言った。

「もし葵君さえよければ、……私たち、付き合ってみない?」



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